新堀川を育む会 訪問レポート
人と自然が共生する川辺の環境をつくる
~「新堀川を育む会」が始めた挑戦~
【地域の課題】
東武アーバンパークラインと新4号国道の交差地点のすぐ近くを流れる新堀川は、かつて農業用水として地域の暮らしを支えていました。一方で、現在は生活排水やごみの流入などにより、生態系のバランスが崩れつつあります。特に、外来植物の繁茂やペットボトルや大型廃棄物などの投棄が深刻で、行政で一部の伐採・草刈り等の対応はしているものの根本的な環境改善には至っていません。地域にとって身近な存在であるはずの川が、「見て見ぬふりをされる場所」となっていることが課題です。護岸工事がされていない貴重な環境だからこそ「人と自然が共生できる川辺の環境を取り戻したい」という思いが、新堀川を育む会の代表である平島さんの活動の原動力となっています。
【現在の活動内容】
「新堀川を育む会」は、専門家の助言を受けながら『生態系を守り、生物多様性を育む』を合言葉に活動しています。過度な伐採を行わずに生き物がすむ環境を守るための「剪定」を行うことで、あえて光が差し込む空間をつくり、水辺の植物が育つ環境を整えています。その結果、一部では小魚の数も増えるなど、確かな成果が見え始めています。また、オオブタクサやアレチウリなどの外来種を除去し、メダカやドジョウ、トウキョウダルマガエルなど在来種の保護にも尽力。地域固有のホタルのDNAを守るため、岩槻ホタルの会とも連携しながらホタルの飼育にも挑戦しています。ゴミ拾い活動の仲間は口コミで広がり、遠方からも参加者が集まっています。
【今後取り組みたいこと】
今後は、新堀川の一部の区間を重点的に整備し、エコトーンなどもある川のあるべき姿をモデル的に示すことを目指しています。その先には、地域住民が自然と関わりながら暮らせるまちづくりの実現があります。たとえば、下流にある老人ホームと連携し、散歩の休憩所としてトイレを借りられるようにするなど、川沿いを歩く人を増やし、世代を超えた交流の場を生み出す構想も。さらに、地域の学校や子どもたちが環境学習に関われる仕組みづくりを検討しているとのこと。川を「遠い存在」から「日常の一部」へと変えることが、活動の次なるステップです。
【協働のタネ】
「新堀川を育む会」の活動から見えてくるのは、川という住民の共有財産を“独力でなんとかするのではなく、人とのつながりの中で進めていく”という姿勢です。川の清掃や植生管理には、専門家、地域住民、行政、それぞれの立場が協力し合うことが不可欠です。今後は、地元の住民や農家さんはもちろん、NPOや企業や学校との協働にも期待しています。子どもたちの環境学習の場としての活用など、多様な関わり方ができるのではないでしょうか?川を介して人と人がつながり、地域で共に環境を育む市民活動として発展していくことを期待せずにはいられません。
【訪問担当者の声】
お話を聞いて印象的だったのは、単なる川の清掃やゴミ拾い、除草といった「きれいにする」活動に留まらず「生物多様性の回復と地域の自然環境の再生」という目的をもって環境活動を推進されている点です。その目的意識と、生きものがすむ環境を守るための「剪定」を重視した取り組みに感銘を受けました。この活動は、近隣の川のゴミ拾いから始まったとのことですが、代表の平島さんがもともと「自然と人間の共存」をテーマに造形活動をされている方だと知り、根底にある「人と自然が共生する川辺の環境を取り戻したい」という強い思いが活動の原動力になっていると感じました。専門家の助言を採り入れながら、在来種の保護や環境の回復に取り組む素晴らしい活動で、数年後にはこの活動が実を結び、理想的な新堀川になり、蛍が飛び交う様な環境になっている事を期待します。
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