NPO法人3ぶんの1訪問レポート
【地域の課題】
春日部市第5地域包括支援センター(一ノ割948−1)に勤務している大塚さんと松本さんは、コロナ禍で高齢者の行き場がなくなってしまったことに危機感を覚えました。
街の喫茶店は潰れ、公民館は手続きが煩雑で、古くからの活動団体が多く、なかなか予約が取れない。お年寄りは身体を動かさないとすぐに弱ってしまうし、家にこもらず、外で誰かと会話をすることが認知症予防にもなる。個人の力で、地域の高齢者が気軽に集まって、わいわいがやがやとおしゃべりできる場所を作れないか。そう考えた二人は、築50年の借家が空いていることを人づてに知り、大家さんと交渉を重ね、2025年4月の開業に漕ぎつけました。
大塚さん(右)と松本さん(左) 手編みサークルが活動中 天井も壁もすべてDIY
【現在の活動内容】
古い天井を取り払い、壁、トイレなどを古民家風のおしゃれな内装に替えました。大塚さんと松本さんが、もともとDIY好きだったこともあり、地域の建築士さんのアドバイスもいただきながら、作業を進めました。出入り口をスライド式にしてテンキーを取り付け、会員になれば、一年365日、誰でも自由に出入りできる空間を作りました。
二人は働きながら、すきま時間で運営しているため、あまり手はかけられませんが、会員さんは自主的にサークルを作り、会費の管理をして、賑やかに活動を楽しんでいます。会費は月額1000円で、皆が当事者意識をもって「あそこん家」を維持しています。
ふらっと立ち寄って、夏はクーラー、冬は暖房にあたるだけでもいい、とお二人は明るく、前向きです。訪問時にも6畳と4畳半の空間に10人くらいの会員がおり、楽しそうに編み物の針を動かし、笑いと話が途切れることはなく、温かみのある活気にあふれていました。
手軽に楽しめる講座やサークル 大塚さんと松本さんの作品 手を動かしながらおしゃべり
【今後取り組みたいこと】
2026年の春、「あそこん家」から歩いて5分ほどのところに空地を借り、屋外の「地域交流スペース」をオープンする予定です。手作業が苦手な方も顔を出せるようなことができれば、と考えたのがきっかけとなり、現在は地域の方々の手を借りて、整地や草取りの作業を行っています。
農園やドッグランスペースを作り、お年寄りだけではなく、こどもも大人も楽しめる憩いの交流スペースになれば、と二人の夢は拡がります。大きな農機具小屋があり、そこも借りることができれば、「あそこん家」のように改装し、さらに多様な市民の居場所として活用してもらえるかもしれません。
NPO法人3ぶんの1ホームページより
【協働のタネ】
大塚さんと松本さんの活動から見えてくるのは、「身の丈に合った活動」です。二人ともフルタイムで働く傍ら活動を行うため、できるだけ労力をかけず、会員さんが自分でやれることはすべて自分でやってもらう。できるだけ地域の人に協力を仰ぎ、様々な人を巻き込んで活動を前に進める。私たちぽぽら春日部は市民活動の中間支援組織として、地域に点在する居場所同士が連携し、ネットワーク化すればさらに活動はパワーアップすると考えがちですが、それぞれの居場所がそれぞれのこだわりを持って、できる範囲で活動をすればよいとお二人は言います。肩の力を抜いて、運営主体自ら活動を楽しむ姿勢が、場所の居心地の良さにつながっているのかもしれません。「あそこん家」を始めた動機は、高齢者の居場所の必要性が半分、もう半分は二人がDIYをしたかったからとのこと。
トイレもリフォームで快適 スライド式のドア 会員さんのさまざまな作品展示
【訪問担当者の声】
とはいえ、運営の収支は毎月赤字で、開設時にかかった費用は回収の見込みが立っていません。100%自己資金だから、自分たちのやりたいことがやりたい方法でできる、と胸を張る一方、代表理事の大塚さんがこれだけは書いてほしいと力説したのが「活動開始時の資金援助の仕組みづくり」です。助成金などは活動開始前の計画に対しては支払われないことが多く、春日部市でも居場所づくりの補助金・助成金はありません。
「利用者がたくさん来てくださいっていう周知はしなくていいんですよ。人数のキャパがあるし、いろんなとこから来られても駐車場があるわけでもないので。そうではなくて、資金的な援助の仕組みを作る。場所を作りたいと思っている人を後押しする仕組みがあって、いろんな人が活動を始められる施策があればいいですよね」
市民活動センターぽぽら春日部でも、こうした声を多くの方に届けられるよう、努めてまいります。
笑いの絶えない空間 DIY好きから始まった活動 365日利用できます
NPO法人3ぶんの1 ホームページでさらに詳しく
https://npo-3bunno1.my.canva.site/dagkhr0bpo0