「桐の会(ポロウニア・クラブ)」会報 環境学習:E16 2025年12月度 参考文献紹介2 Robert Bilott著 旦 祐介訳『毒の水』
■桐の会 会報 :「環境学習会 2025年12月度」参考文献紹介2 December 15 ,2025
E16 環境学習: Robert Bilott(ロバート・ビロット)著 旦 祐介 訳『毒の水』日本語版 2023年4月 花伝社
本書は、ロバート・ビロット弁護士本人によるノンフィクション著書。英文タイトル『Exposure:Poisoned Water,Corporate Greed,and One Lawyer’s Twenty-Year Battle Against Dupon (曝露:毒の水、企業の貧欲さ、そして、ある弁護士のデュポン社に対する20年に渡る闘い)』、はビロット弁護士が、環境問題の責任を問うべく、巨大企業と20年にわたって戦い続けた自伝的記録である。世界的大企業のデュポンが、有害な化学物質を工場外に垂れ流していた。米国の地域に広がる健康被害、1人の農場主の訴えから巨悪に気づいた弁護士が、市民のため、訴訟に挑む。18年の戦いの末に、6億7千万ドルもの和解金を勝ち取り、政府も規制に乗り出した。問題の化学物質は、日本でも注目が高まりつつある有機フッ素化合物の総称「PFAS(ピーファス)」だ。著者はその事実を膨大な調査によって暴き出す。法的な責任を問うための壁は高く、多くの困難が立ちはだかる。巨大企業との争いの中で、企業側の論理と被害に苦しむ人々、不安にかられる人々、ビロット自身の苦悩を描く。「和解」は「科学的な証明」ではなく、「関連性の可能性」というC8委員会の調査基準に同意したものだった。もし、この「裁判」がなかったらPFASの危険性を人々は、まだ知らないままだったかもしれない。その後、PFAS関連の訴訟は、他にも広がり、ミネソタ州・ミシガン州・カリフォルニア州・アラバマ州でも起きている。PFASの環境汚染は21世紀の新しい環境問題である。
■Robert Bilott(ロバート・ビロット)著 旦(だん)祐介訳 『毒の水』 日本語版 2023年4月 花伝社
「第1幕 その農場主 第1章 ドライ・ラン川 1996年7月7日 誰も彼を助けようとしなかった。その農場主は、太陽でまだらになった渓谷を流れる小川の淵にたっていた。(中略)昔は透き通っていた。しかし、今や食洗機の排水のようになってしまった。石の上を流れるにつれて、泡が石鹸の膜のようにできていた。(中略)彼の家畜が死んでいるだけではない。シカ・鳥・魚・その他の野生動物がドライ・ランとその周辺で次々と死んでいた。(中略)」、「第2章 電話」・「第3章 パーカーズバーク」・「第4章 農場」・「第5章 秘密の原材料」・「第6章 紙の手がかり」・「第7章 科学者」・「第8章 手紙」・「第9章 会議」・「第10章 雌牛が帰ってくる」・「第11 和解」・「第2幕 町 第12章 岐路」・「第13章 最初の血」・「第14章 特権化」・「第15 代替データ」・「第16 破壊欲」・「第17 ネズミとヒトについて」・「第18 テフロンの歩兵たち」・「第19 現実的悪意」・「第20章 アベ・マリア(神の助け)」・「第21 言説戦争」・「第22 疫学」・「第23章 知られざる健康被害」・「第24 企業の知識」・「第25章 急転直下」・「第26章 ビッグ・アイディア」・「第3幕 第27章 調査」・「第28章 第二波」・「第29 腹黒い科学」・「第30章 証明責任」・「第31章 痙攣」・「第32章 報いへの道」・「第33章 公判」・「第34章 報い」・「エピローグ」、と続く。2017年2月、デュポンは、オハイオ州とウェストバージニア州の3500以上の裁判について、6億7070万ドル(約765億円)を支払うことで、和解した。
和解後、PFOAやPFOSより生体持続性が低いと宣伝されるGenxのような代替品を含めて、4千種類近くあるPFAS全体(現在は12,700種類とされている)が危険かもしれないという意識が高まった。回想録は、新たな集団訴訟に挑むところで筆を置いている。
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